第六章 ドストエフスキイ体験 二

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第六章 ドストエフスキイ体験 二

私は『罪と罰』は余り好きになれず、『罪と罰』はドストエフスキイの巨大作群の中では愚作に入ると思っていますが、それ以外の『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』はどれも素晴らしいものです。
これらは少なくとも小説家を目指しているのであれば、最低限読んでいないといけない作品です。

一方、ドストエフスキイの名が上がれば必ずこの人の名も上がるトルストイですが、大変な力作で名作揃いなのは認めますが、私にはトルストイにほとんど何の魅力も感じなかったのです。

それでは私がドストエフスキイのどこにそんなに惹かれるのかというと、ドストエフスキイ自身言明していますが、ドストエフスキイの作品詩「魂のリアリズム」だという事につきます。
埴谷雄高もよく書いているように、この「魂のリアリズム」は「現実」を「現実」以上の何かに変容させてしまう何かなのです。
その何かが私に解かっていれば、私は、今、大作家になっている筈ですがそうなっていない事から解かる通り、私には尚自身で見出さなければならない課題だと思います。

私の感想でしかありませんが、もう21世紀を迎えたのにドストエフスキイを超えたと思える作家はいまだに出現していません。
それ程、ドストエフスキイの成し遂げたことは偉大で、しかも、なかなか越えられない巨大な壁となって今も此の世に存在しているのです。

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