人と絆を作るもの「伏」(1)

『伏』:ふせ(フク)

「伏」というこの漢字には、「犬」という漢字が含まれていますね。

「イヌ」繋がりということで、もう1つ「犬」に纏わる漢字を紹介します。

「大」の漢字は、足を広げて立つ「人=人間」です。
人にピッタリと寄り添い生きる動物とは、「犬」ですね。

そして「伏」という漢字の形をよく見てください・・・。

この「伏」という漢字の形を裏付けるように「伏」には少し、胸が苦しくなるような、切ないエピソードが伝えられています。

中国のとある村に、1人の貧しい老人が暮らしていました。

老人は早くに家族を亡くし、頼れる親戚もなく、その寂しさを紛らすために、1匹の小さな犬を飼い始めました。

犬は老人によく懐き、どこへ行くにも付いて歩くほど老人を慕っていました。

その様子を村人たちも微笑ましく想い、老人と犬を何かと気に掛けるようになっていきました。

そんなある日、もともと身体の弱かった老人は流行り病に掛かってしまいます。

老人は病気のせいで次第に弱り、歳のせいもあって、そのまま寝込んでしまいました。
そして、そのまま亡くなってしまったのです!

人と絆を作るもの「伏」(2)

老人が亡くなってから数日、弔いのためにしばらく家に置いておき、準備が整い次第、穴を掘って埋葬してあげようと、村の人たちは話し合いました。

老人が可愛がっていた犬はその間、食事を与えても口にせず、ずっと老人の傍らに寄り添い、時折、悲しげに声を出しました。

そして準備が整い、いよいよ埋葬という当日、誰かがこう言いました。

「おい、あの犬も一緒に埋めてやったらどうだ?」
「さすがにそれは・・・」

そんな声もあったそうですが、あんなに可愛がっていたことだし、最期の別れにと、犬を老人の亡骸の側に置いてやると、犬は老人の遺体の側に横になり、そのまま動こうとはしなかったそうです。

それならと、老人の遺体と犬の上に土を掛け始めましたが、土を掛けられている間も犬は、目を閉じ、そのまま身じろぎもせずに、ジッとしていたといいます。

こうして犬は老人と一緒に土の中に埋められ、その後2度と、土の上に顔を出すことはありませんでした・・・。

そのときの老人と犬が寄り添う形を漢字に映したものが「伏」になったというお話です。
人と犬の絆が生んだ、少し切ないエピソードです・・・。

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