第三章 徹底的に悩み通す 二

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第三章 徹底的に悩み通す 二

さて、ヘッセに魅了され、ニーチェに拘る中で私はそのころから文を書き始めました。
それは小説と呼ぶのはおこがましい端なる思索の断片ですが、ヘッセ、ニーチェとドイツの作家や哲学者に惹かれていたことから、たぶん突然にアインシュタインを知ることになったのです。

これは小説家入門奮戦記ですが、私の場合、アインシュタインを知った時から、物理学に興味が移り、湯川秀樹の随筆など、科学関係の書物を読み漁り始めたのでした。

ここで指摘しておきたいのですが、これから、小説家としてやって行こうと考えている人は物理と数学のどちらにも通じていないと駄目な時代なことは確かです。

それはともかくも、私は自分の思索の断片を書き続けながらも物理学の本に夢中な日々を中学三年生からずっと大学入学まで続いたのでした。
大学では文学とも考えたのですが、文学はいつでも学べると物理学部へと入学したのです。
そのころになると、小説だけでは物足りずに詩を読むようになっていました。
最初は東西の詩人の代表作を集めた作品集から詩に踏み込んだと思いますが、詩にのめりこむという事は、既に私は青春らしく「存在」について既に悩み始めていたのは確かです。

その「存在」は詰まる所、世界認識の方法についての悩みといってもいいのですが、物理的な世界認識の方法で私は「存在」に対する悩みから救われるのではないかと、期待していたのですが、私にとって、物理学的な世界認識の方法では、私の悩みは全く解決されるどころか、さらに悩みが深くなり、私は、だんだんと大学に通わなくなって、詩集と哲学書ばかりを昼夜を問わずに読み漁り続けては、一向に解決できない「存在」に対する悩みのど壺に嵌ったまま、身動きが出来なくなっていたのでした。

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