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第二十章 初めてのブログに書いたもの 一
ちりも積もれば山となるとはよく言ったもので、一週間に大学ノート二頁の量のブログに書いたものも二、三年経てば、本が一冊出来る量の文章になったのでした。
しかし、最初に書いたのは次の短いアフォリズムのようなものです。
〈「自同律の不快」
不合理故に我信ず。
我は何故に存在してしまったのであらうか。
知らず知らず自他の逆転の仮象に埋没して行く……。〉
といったものです。
これは埴谷雄高を知っていれば、すぐに解かるもので、先ず、「自同律の不快」は埴谷雄高が一生をかけても未完で終わった大作『死霊』のひとつの主題になっているものです。
それを題名にしたのは、思うに、埴谷雄高との決別が含意されていて、最初の書き出しの
不合理故に我信ず。
は、埴谷雄高のアフォリズム集の題名のそれです。
こう書きだすことで、私は、独り立ちして物を書くという気概もそこには含まれています。
「自同律の不快」
不合理故に我信ず。
は埴谷雄高からのそのままの引用です。
つまり、これをもって物を書く跳躍板にしたのです。
そして、その次に、
〈我は何故に存在してしまったのであらうか。
知らず知らず自他の逆転の仮象に埋没して行く……。〉
と続きます。
何の変哲もない唯の感慨を文章にしただけの〈我は何故に存在してしまったのであらうか。〉という文が、その後の全てを決定した書き出しだったのです。
誰でも一度は「私は何故存在しているのか」ということは思ったことがあるありふれた言葉に過ぎません。
それがすべての始まりだったのです。
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