第十四章 埴谷雄高の死

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第十四章 埴谷雄高の死

漸く自分がテレビを見ていることを認識できるようになった私はすぐに本が読みたくなって仕方がない状態になりました。
そこで、そのような状態でも読んで面白かったのはドストエフスキイと埴谷雄高と武田泰淳とポーとブレイクだけでした。
それ以外は読んでいても全くつまらなく、それよりも、全く読むに堪えないものばかりでした。

ある日を境に私はテレビを一切見なくなり、上記に挙げた作者の本ばかり読むまでに強度の抑鬱状態から脱出したのでした。
しかし、物が書けるまでにはあと数年が必要であったのです。

とにかく、本が読めるようになった私はぼうっと針のむしろの上にいる自身の状態から脱出するべく本にかじりつくことになったのです。

そんな状態になってやっと私は昼間寝られるようになりました。
夜は全く寝られずに、ラジオを聴きながら本を読むという生活を送っていました。

そんなある日のこと、私は不思議な夢を見て、しかも、全く起きられないほどの頭痛を起こしてその頭痛に我慢していると、埴谷雄高死去のニュースをラジオで聞いたのです。

蛇足ですが、その日を境にして、私は霊媒体質になったのか、訳の分からない人に夢で出会い、そして、最後は必ずその人に「さようなら」と言われて、その人が彼の世――夢ではなんでもわかるのです――に出立する夢をしばしば見るようになり、私はというと、寝ていて肉体的に何らかの負担がかかっているのは間違いなく、そんな夢を見るときは寝ていてぐったりと疲れて私が無理矢理此の世に引き返すようにして起きるのが常でした。

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