第二十一章 初めてのブログに書いたもの 二

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第二十一章 初めてのブログに書いたもの 二

〈「自同律の不快
不合理故に我信ず。
我は何故に存在してしまったのであらうか。
知らず知らず自他の逆転の仮象に埋没して行く……。〉

前回でも書いた通り私が最初にブログに書いたものがこれです。
埴谷雄高からの引用の次に書かれた、

〈我は何故に存在してしまったのであらうか。〉

とは前回でも書いた通り何の変哲もない感慨です。
しかし、感慨が書いてあるということは、そこで小説を書く事の断念が含まれています。
小説を書く事を断念した故に、

〈我は何故に存在してしまったのであらうか。〉

というありふれた問いが書かれたのです。
また、その当時の私は、

〈我は何故に存在してしまったのであらうか。〉

の一文を書く事でしか最早文章らしいものが書けない状態だったことも表しています。
このありふれた問いの次に漸く私自身の表現が書かれています。

〈知らず知らず自他の逆転の仮象に埋没して行く……。〉

これは〈不合理故に我信ず。〉への返歌みたいなものです。
〈吾信ず〉と書き出していながら〈自他の逆転〉という言葉が書かれている事で、

〈不合理故に我信ず。
我は何故に存在してしまったのであらうか。〉

と、

〈知らず知らず自他の逆転の仮象に埋没して行く……。〉

との間にはわかる人にはすぐにわかると思いますが、そこに深い深淵、若しくは断裂があって、それを〈知らず知らず自他逆転〉でその深淵へと飛び込んだことが書かれているのです。
つまり、私にとって、

〈「自同律の不快
不合理故に我信ず。
我は何故に存在してしまったのであらうか。
知らず知らず自他の逆転の仮象に埋没して行く……。〉

は、埴谷雄高を跳躍板に己にぽっかりと空いていた深淵へと敢えて飛び込むとの宣言がここには書かれているのです。
それ故に〈知らず知らず自他の逆転の仮象に埋没して行く……。〉と、仮象に埋没して行くと書かれてあるのは、私にとっては必然だったのでした。

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