第十二章 地獄の始まり

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第十二章 地獄の始まり

私が心身を病んで実家へと強制送還されたときの私は、既に正気を失っている悲惨な状態でした。
そんな自分を守る防衛本能が働いていたのか、私は自身の殻に閉じこもり精神も身体も身動き取れない、否、身動きとらない、譬えるならば一個の「物体」と化していたに違いありません。

私は既に病院へ通っていたにもかかわらず抑鬱状態はさらに悪化をし、最早何もすることが出来ない状態で実家へと帰ってきたのです。

そんな私が唯一出来たのは唯テレビをつけっぱなしにしてもらい、それを見るでもなくぼうっと瞼に映す事位でした。

当然、そんな状態でしたので、物など書くことは不可能でした。
その当時は、終日テレビをつけっぱなしで眠りもせずに唯ぼうっと一日が過ぎて行くのを我慢している状態でした。

そんな状態が十年以上にわたって続くことになったのです。
既に医者に行くことすらできなくなっていた私が回復する見込みは、その当時全くありませんでした。

それでも時折、何かを書きたくなるのか鉛筆を持つのですが、当然のこと、何にも書けずに、唯、白紙のノートを見続ける外ありませんでした。
全く何にも書けないのです。
これにはさすがの私も苦笑するしかなく、ぽいっと鉛筆を放り投げてはまたぼうっとテレビを見るでもなくぼんやりと眺めているのでした。

書けないことがさらに私にはストレスとなって私の抑鬱状態をさらに増長させたのは言うまでもありません。
私にとってなにも書けないという事は私の存在が全くの無意味に化したことを意味していたのでした。

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