第二十八章 飛翔 三

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第二十八章 飛翔 三

今回も、まだ、「異形の我」の話です。
フラクタルという和訳で自己相似を意味する言葉で無理矢理に「地球」と「頭蓋内の脳」を繋ぐことをやってのけた私は、そこから一気に深海生物のグロテスクな姿形が生まれた秘密と頭蓋内の闇の漆黒の闇を重ねています。

〈深海に棲む生物の異様な姿は漆黒の闇の中で自らの姿を妄想し、棲む環境がさうさせたに違ひない。〉

私は、そして、深海の生物と頭蓋内の明滅する妄想をこれまた無理矢理に「漆黒の闇」という言葉で繋ぐ荒業をやっています。
ここで、私の思考はホップ・ステップ・ジャンプと思考の三段跳びをやったのです。
それを証しするのが次の文章です。

〈私の脳裡に浮かぶ仮象の海の奥底には私の知らない異形の私が必ず棲息してゐる筈である。〉

私は心理学や精神分析に不信感を持っていますので、深層心理とか無意識とかの言葉はなるべく使用したくないので、その言葉の代わりに「仮象の海の奥底」という言葉で置き換えています。
そして、そこに「異形の我」という「」とは違いながら同じ存在を見出したことを跳躍板にして私の思考は一気に飛翔します。

〈中にはぬらりと仮象に現れてその異形を見せる奴もゐるだらうが、多分奴らの殆どは私が死んでもその姿を現さずに闇の中でひっそりとその登場の機会を窺ってゐる筈だ。
――お前は誰だ。
――ふっ、お前だぜ。〉

ここで私は「異形の我」というものは晒首の頭蓋内の闇にも棲息するに違いないという思考の飛躍を見事に成し遂げたのです。
そして、「異形の我」が「」であることを示すために、

〈――お前は誰だ。
――ふっ、お前だぜ。〉

の独語のような会話で「異形の我」が「」である全てを語ったのです。

右矢印第二十九章 出版への道」へ

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