第四章 徹底的に悩み通す 三

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第四章 徹底的に悩み通す 三

存在」に憑り付かれて、二進も三進も行かなくなるのはまさに青春ならではです。
しかし、今にして思えばそこでたじろがないことが大切です。
大げさに言えば、人生の壁にぶつかったならばその壁をよじ登って超えるまで己の不甲斐無さを我慢し続けることが小説を書く上で、やがて最も大切だと解かるはずです。

私は大学時代は、物理の世界認識の方法に大いなる不満を抱き、やがて大学には行かなくなったと前回申しましたが、それでも卒業はしました。
まあ、その話は後にして、大学に行かなくなった私は、高田馬場や早稲田の古本屋街を暇さえあれば歩き回り、私が陥っている「存在」という人生の陥穽から這い出るべく、そのヒントとなると思われる本を見つけてはそれを読み、「また駄目だ」と思って、また古本屋街を歩き回ることの繰り返しでした。

そして、ある日、大学近くの喫茶店に入ったところ、大学の英語の講師の人がいました。
それが私の人生の変節点だったと思います。
その人は、私が語らずとも私が陥っている状況をすぐ解かったようで、私にイエィツとブレイク、そして埴谷雄高の『死霊(しれい)』の存在を教えてくれたのです。
それ以前に、私はドストエフスキイ体験をすでに経験していましたが、その話は次回にします。

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